パイナップル畑からの贈り物

~清掃伝説~

セドリクは早朝から大理石の床をモップで拭いていた。さわやかな日曜の朝、雨上がりの庭園は雨露に濡れた花々が滴をこぼしている。
ふと上階を見上げればピアノの音色。アルベルが弾いているのだ。
床を拭き終わると、アルベルの部屋へ向かう。
「これが例の曲?」
アルベルが床にインクをこぼしていたので、セドリクはそれを拭きとると、腰に手を当てて訊いた。
「うん。おかげで何とかまとまりそうだよ」
アルベルはすらすらと譜面に沿って弾きならす。セドリクはくすりと笑ってアルベルに厨房から用意された朝食を出した。
「今日の予定は何かあるの、リーザ?」
アルベルはセドリクのセカンドネームであるエリーザベトの愛称で尋ねた。
「お掃除の予定でぎっしり。日曜だしね」
お城は掃除してもきりがないくらいたくさんの部屋がある。文字通り何日でもかかる。
特に城の地下神殿などは掃除のし甲斐がある。
「あ、クモの巣」
セドリクは地下神殿に続く地下水路の通路でクモの巣を払い、さらに階下へ降りる。
城の地下は湖の水が循環している高度な作りで、とてもひんやり。
地下の書斎を整理したり、神殿の奉納殿を掃除したり。
場所をあげ出せばきりがないくらいだ。そして、それはセドリクが遺跡の更に地下へと続く中央階段を降り、右手前の扉に手をかけたころであろうか。
「寒いのう」
そしてヒュ~~~~ドロドロとした効果音。
「ん?」
セドリクは扉を開けた。
中には頭に斧を乗せた小柄な老人がいた。そして血のり。
「何をされてるんです?ご先祖様」
セドリクは寒い寒いという老人に尋ねたが、老人はセドリクを無視した。
「ああ、寒い寒い」
そうしてうろうろ歩きまわるので、血のりが床に飛び散る始末だ。
セドリクはそれを拭いてまわるのだけで日が暮れた。
いったいどれくらい経っただろうか?
突如、老人はヴァルハラへ召された。あふれんばかりの光とともに。
セドリクは幽霊を見たのだ。
そうして地上に出ると、翌日の朝だという。文字通り一日中掃除して回ったのであった。
「おなかすいたなぁ……」
そうして厨房でまかないの料理を食べて休憩した。
夏の肝試しの一幕であった。






~パイナップル畑からの贈り物~

ローゼルツ南部の農園からパイナップルが届いた。
よく熟れていて芯まで食べられる。
セドリクはパインスライサーでパインをカットしてもらったり、串刺しにして庭で親戚のレオノーラと食べたりしていた。
それはとても美味しくジューシーだ。
夏祭りもたけなわで、とても盛り上がっている。夜になると水上花火が打ち上げられ、極東は桜海嶺の花火職人が技を競ったりもする。
エーデルラントの夏は短く、儚いが、とびきり素敵な季節である。
白夜で夜も遅くまで明るいし、月明かりの森を散策したり、湖沼地帯の湖一帯をまわったり、愉しみはいくらでもある。
パイナップルが熟す頃、夏のエーデルラントはとても気候が良く、避暑にはもってこいの場所だ。
セドリクはノルトラントのおてんば姫レオノーラにこう言った。
「今年も夏真っ盛りだね」
レオノーラも楽しそうに笑い、パインをまた頬張ったので、セドリクもそうした。
とても明るい季節に、ローゼルツより愛をこめて。

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この記事へのコメント

くろのす
2011年07月17日 14:05
キリリク受け取ったよ。
ありがとうm(__)m

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